日本ワインの基礎知識②

日本ワインの概要については①で触れましたので、次はメジャーな生産地について紹介したいと思います。北は北海道、南は沖縄までワイナリーの所在地に偏りはあるものの、日本中でワインが造られています。今回はその中でも北海道、岩手・山形、新潟、長野、山梨の5エリアに絞ってお話をしたいと思います。

ワインについて勉強し始めると、やっぱりワイナリーに行ってみたくなりますよね。そうは言っても、フランスやイタリアなど、日本から遠い国へ行くのは中々大変。そうなると、日本のワイナリーに興味が湧く方が少なくないと思います。今はアーバンワイナリーという市街地のワイナリーも増えてきたので、日本ワインに興味を持つ方も増えてきたのではないでしょうか?個々のワイナリーは別途改めて記事にしたいと思うので、今日はメジャーな生産地とその特徴について、学んでいきたいと思います。

■北海道のワイン

日本ワインと言えば山梨、長野がとても有名ですが、実は同じぐらい北海道も活気があるのはご存じでしたでしょうか?NPO法人 ワインクラスター北海道のウェブサイトによりますと、2024年8月現在、なんと北海道には66か所のワイナリーがあるそうです。増加の背景としましては、ある程度まとまった土地が手に入りやすいことが挙げられます。そして、1軒あたりのワイナリーの生産量は100Kl以下の小規模ワイナリーが多いのも特徴です。エリアは石狩平野南部の空知(そらち)地方と余市のある後志(しりべし)地方に集中していますが、富良野も人気があります。北海道ワインの最大の特徴といえば、ヨーロッパ系の品種(ケルナー、ツヴァイゲルトなど)を多く栽培している事です。というのも、北緯がシャンパーニュ地方やラインガウとほぼ同じだからです。北海道ワインの歴史は「明治~第二次世界大戦」「戦後~1990年代」「2000年代以降」の3段階にざっくりと分けることができます。覚えておきたいポイントとしては、2012年にアメリカ人のブルース・ガットラブが空知地方にワイナリーを設立し、多くの栽培農家が彼のもとで研鑽を積んで巣立っていった事でしょうか。いまでは北海道庁がワイン事業を強化してワイン塾を開催するようになりました。ますます今後が楽しみなエリアです。

※NPO法人ワインクラスター北海道:https://winecluster.org/contents/winery/

■岩手、山形ワイン

岩手県は日本各地のブドウ栽培地の中では冷涼なエリアになります。あまりワイン造りのイメージがないですが、実は明治以前から野山に自生しているヤマブドウという野生のブドウを発酵させてお酒として飲む習慣がありました。1960年代には花巻市にワイナリーが設立され、本格的なワイン作りが始まりました。今では県央から県南にかけての北上川流域が一番盛んなエリアです。主なブドウ品種はリースリング・リオン、ヤマブドウが挙げられます。

そして、山形県といえばフルーツの生産地として有名ですよね。フルーツ以外にもお米、日本酒、畜産など食の宝庫です。特にマスカットベーリーA、ナイアガラ、シャルドネ、メルロなどが栽培されています。生産量が多いのは村上地方の上山市と置賜地方の南陽市、高畠町です。山形のワイナリーといえば、やはり高畠ワイナリーと朝日町ワイナリー、月山ワイナリーが思いつきます。特に高畠ワイナリーのスパークリングワイン「嘉」はunder 2,000円で買える国産スパークリングのトップクラスだと思っています。美味しいワインが多いエリアではありますが、米沢市にある日本酒メーカー『東光 吟醸梅酒』もまた大変素晴らしい逸品で、大変魅力的なエリアの一つです。

■新潟のワイン

新潟のワイン造りの歴史も意外と古いです。明治20年にはワイン用のブドウ栽培が始まりました。何よりも、日本ワインの父と言われる「川上善兵衛」の本拠地であることは外せませんね。川上氏は岩の原農園を開き、マスカットベーリーAやブラック・クイーンをはじめとする数多くの交配育種で実績を残しました。2004年以降の日本ワインブームが追い風になり、角田浜と越前浜にワイナリー設立ブームが起こりました。そして、新潟の生産者たちが一帯を「新潟ワインコースト」と称するようになりました。個人経営のワイナリーが多く、それぞれの規模は小さいですが、シャルドネやメルロなどヨーロッパや中東系の品種を用いた高品質のワインを生産しています。

■長野のワイン

長野県は日本ワインにおいて、トップクラスの生産エリアです。小規模ワイナリーが増えており、ブドウ栽培に従事する人も多いです。2013年には信州ワインバレー構想というワイン産業推進事業が始まりました。コンコード、ナイアガラを多く栽培していますが、それ以外にもヨーロッパ系品種のメルロ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランも全国トップです。赤白比率は、赤が58.8%、白が32.9%で、赤がやや優勢です。そして、県内は「桔梗が原ワインバレー」「千曲川(ちくまがわ)ワインバレー」「日本アルプスワインバレー」「天竜川ワインバレー」という4つのエリアでそれぞれ特徴のあるワイン造りを行っています。私のイチオシはシャトーメルシャンの桔梗が原メルローです。こんなに美味しいメルローが、しかも国産で飲めるとは思っておらず、日本ワインの魅力にはまるキッカケになりました。

■山梨のワイン

そして最後はキングオブ日本ワインの山梨です。日本ワイン発祥の地であり、日本を代表するワイン生産地です。東京からのアクセスが良いため、何度も訪れています。特にブドウの実る時期の勝沼は常に視界にブドウが写りこむほどブドウ畑が多く、ワインの勉強を始めた頃に訪れて大変感動しました。山梨県はワイン事業を推進しており、2009年には甲州ワインの認知度向上のために「Koshu of Japan」という組織を発足。その活動の一環として、フランスに国際ブドウ・ブドウ酒機構というブドウの研究所があるのですが、その研究所が所有するブドウリストに2010年に甲州、2013年にマスカット・ベーリーAが登録されました。甲州やマスカットベーリーAがメインで、他にはデラウェアやプティ・ヴェルドなどもあります。産地は「甲府盆地東部」「甲府盆地中央部」「甲府盆地北西部」「甲府盆地南西部」の4つに分けることができます。そのなかでも、山梨のワイナリーが7割もあつまる東部は覚えておきたいですね。

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